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2015年12月 3日 (木)

笹子トンネル事故の本質

 昨日の12月2日に笹子トンネル天井板落下事故から3年を迎え、犠牲者の追悼慰霊式がトンネル内の事故現場近くで行われ、遺族たちは悲しみを新たにしました。

 この事故は、高速道路老朽化の代表として取り上げられ、国交省の指示で全国のこのタイプの天井板の撤去が、新・旧取り混ぜて一斉に素早く実行されました。

 この事故が、トンネル以外の道路補修費も大きく増額する役割を果たしたことはご存知だと思いますが、国交省、高速道路会社は、この事故について道路管理者の過失責任を追及されることから逃れようと意図しているものと推察しています。

 有料道路研究センターホームページ*の2013年のトピックスで何度も取り上げましたが、この事故の原因は、老朽化も一因ですが、本当の原因は施工法の誤りにあります。
               *http://www.tollroad.org

Originalmethod_3

  天井板を吊り下げるアンカーをトンネルの天井に打ち込んでいるのですが、そのアンカーは、もともと、上の図のように、家屋などの建築の際に、基礎コンクリートに木材を固定するための鉄骨を立てるために重宝がられている工法です。 

 赤色のガラス管(カプセル)にはもう一本の細いガラス管が入っていて、上からアンカーを打ち込むと2本のガラス管が割れて、中身の液体エポキシ樹脂が化学反応を始めます。硬化するまでに、気温によって30分〜2時間かけて、アンカーが固定される仕組みです。
 上の図にはマーキングと書かれた赤いリングがあり、これが蓋の役割をしています。

Tunnelmethod_2

 ところがトンネルでは、上に向かってドリルで開けられた穴にカプセルを差し込みアンカーを叩き込みます。

 カプセルのキャップは弾力性のある樹脂で帽子のツバにあたる部分が、液体の原料が流れ出ないように、一応の用意はしてあります。

 しかし、天井に向かって液体を注入するのはどう考えても無理があります。

 液体かなりの部分がアンカーと壁の隙間から漏れ出してしまいます。その結果、アンカーの支持力が小さくなってしまいます。

 事故後に、抜けてしまったアンカー、途中で宙づりになったアンカーなどの状況がそれを物語ってくれています。

Samplebolts

 一番左のアンカーは16センチのうち、11センチ程、固まった樹脂が残っていますが、一番右側のアンカーでは16センチのうち、コンクリートに接着していたのは、わずか5センチしかありませんでした。

 実は、アメリカでも2006年7月に同じ事故が発生(死亡者一人だけ)、国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board、NTSB )が事故直後から調査に乗り出し、2007年7月に、エポキシ樹脂の接着剤の強度試験を実施して、強度がはっきりするまで、その使用を禁止していました。

 国交省からはアメリカに常時土木技術者が出向している筈ですから、真面目に情報収集をしていれば、日本での対策ができ、事故を未然に防ぐこともできたと考えると残念でなりません。

警察はこの事故を「業務上過失致死傷罪」 の疑いで立件すべく捜査中との情報もありますが、9人もの犠牲者を出した事故ですから、重過失致死傷事件として扱うのが正しいのではないかと考えています。 

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