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2016年7月 3日 (日)

「高速道路の問題点」とその対策 —その2—

無料の高速道路の誕生

 民営化の審議が進む中で、採算性が低い区間を高速道路会社が担当することは困難だとの理由から、その区間を国交省が「新直轄」事業と名付けて自ら施工できるように法律改正が行われ、早々と国交省が無料の高速自動車国道の建設を始めました。

 道路予算が潤沢になり、地方部の議員、議員を支える建設業界の強い要望に応えると共に、一般国道の直轄工事の施工箇所が少なくなった国交省技術者の仕事を確保することが主な目的だったと考えます。

 突然、無料の「高速道路」が誕生したことは、半世紀以上にわたって有料を原則にして来た高速道路制度にとっては勿論、日本の道路問題全般に留まらず、国民生活全体に隠された影響を及ぼしています。「混乱の原因になっている」と言った方が適切かも知れません。有料の高速道路では「安全、快適で早い」という利用者の便益に見合った料金をいただき、その料金で償還を目指しますが、高速道路の利用者は、料金に加えて、ガソリン税などの二重負担を強いられてきています。

 直轄の高速道路を無料で走る利用者と、有料の高速道路の利用者との負担の格差が大き過ぎると思いますが、意外にも批判の声は殆ど聞こえて来ません。

 中国道から日本海に向かって延びる4本の高速道路が、交互に有料と無料になっているのは何故なのか、納得の行く説明ができるとは考えられません。 (下に示した地図をご覧下さい。青色が有料区間、灰色が無料区間です。)


Tollroadmap

 

問題解決の方策の提言

 20145月に決められた、2065年までに借入金を全額返済する計画が、本当に実現可能なのかどうか大いに疑問です。償還期間延長の理由になった補修費は、当面、緊急に実施が必要な補修費だけを計上したものです。今後50年の間に、老朽化が進み、補修が必要な区間はどんどん増える一方です。

 料金収入も計画通りに達成できる保証は皆無で、2065年までに償還できるように逆算されているに過ぎません。「償還が完了して無料開放できる」時機が来ることはあり得ないと考えるべきです。

 民営化の時に作られた償還計画が、10年もたたずに破綻したのです。50年後の見通しが実現すると本当に信じている人は、計画を作った国交省にもいなかった筈です。

 かなり以前から国交省の中に、償還が完了した後に、維持・管理費だけを払って頂く「維持管理有料道路」にするという考えがありました。しかし償還完了自体が「絵に描いた餅」なのですから、もっと具体的で実現可能な解決策を考えるべきです。以上の問題点の解決に関する私の提言は下記の通りです。

 

 提言1 償還主義のバイブルである「特措法」を廃止し、代わりに「有料道路事業法」(以下「事業法」)を制定すること

 この事業法は、イタリア、フランスなど欧州で広く行われている「コンセッションConcession方式」を参考に、法律化を図れば良いのです。
 

 民営化の議論の最初の段階で「コンセッション方式」も話題になりかけたようですが、国交省の強い水面下の反対に合い、あえなく立ち消えになったと理解しています。

 現在の特措法は、前記のとおり、乏しい財政状況下、如何にして道路整備を進めるかを定めた、文字通り「特別措置法」であり、制定後既に約60年を経過している古めかしい制度です。当時予想もしなかった、大規模な有料の高速道路ネットワークに適用することは、かなりの矛盾があります。

 一例を上げれば、高速道路の用地は、償還後は国の財産として残るのですから、その買収・補償費を料金収入で償還する必要は無い、という意見がかなり早くから、度々出されては消えていました。

 事業法での扱いは、道路用地は返済不要の固定資産であり、用地以外の道路本体でも、減価償却をすれば良い部分が殆ど、ということになります。

 特措法も、地方都市などの橋や短距離の道路に限って残して置くことは、まだ存在価値が残されています。

 これらの事業は、規模が小さいものが大部分ですから、開業後の負債が増え続ける場合や、逆に償還が順調で残りの期間が短い場合には、残額を単年度で償却して無料化する措置がしばしば採られてきています。

 愛知県道路公社で、去る6月24日に「構造改革特区」として有料道路の運営権を民間企業への売却(コンセッション)が発表されました。10月実施予定です。この方式が実現すれば、都府県などでの特措法は不要になります。

 

 提言2 国交省が直轄事業で開通させた高速道路・自動車専用道路を有料化すること

 中国.山陰を結ぶ2本の無料高速道路に代表される「新直轄」施工の無料の高速道路だけでなく、例えば名阪国道(延長73.3km)のように4車線の立派な無料の自動車専用道路が随所にあります。

 これらの自動車専用道路を、快適性、高速性、安全性などの追加投資を行うことを条件に、高速道路会社に引き渡し、料金水準の低い有料道路に転換させます。2車線の道路でも、登坂車線の追加や一部区間の4車線化で同様の措置をとります。

 この措置については、当然、利用者の反対が予想されますが、「高速道路」の償還実現を目指した現在の高い料金を、事業法による安い料金に引き下げることと並行して、全体としてのバランスを取ることによって説得力が強まり、十分、実現可能だと考えます。

 

 提言3 有料道路が、減り続けるガソリン税などに代わる有力な道路財源であることを周知させること

  日本には1,000兆円を超える巨額の債務があります。「高速道路」の債務だけでなく、この巨額の国債を償還しなければなりません。その中で、ガソリン税、自動車関連の諸税に代わる道路財源は「走行距離課金=通行料金」しか考えられません。世界の主要国の多くがこの道を模索中です。
 

 有料道路は、この「走行距離課金」の最も理想的な模範なのです。いきなり「走行距離課金」の説明をしても理解が難しいでしょうから、提言2を推進し、有料道路を拡大する中で、将来の道路財源についての理解を地道に深めて行くことが、国交省だけでなく政府全体の重要な責務だと信じます。

 

 

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