アメリカ・オレゴン州 「走行距離課金」への動きに関連して
トランプ大統領の誕生で、アメリカ中が混乱しているようですが、表題の案件については着実に検討が進んでいるようです。
左のOReGOの画像は、オレゴン州が「走行距離課金制度」の運用に使用するために決めたものですが何時ごろ作られたものか気がつきませんでした。
オレゴン州は、1919年にアメリカで初めてガソリン税の制度を導入したことを誇りにしていて、いま、ガソリン税から「走行距離課金」への転換にあたって、先頭に立つことを当然のことと考えているようです。
アメリカで「走行距離課金」への転換が上下両院、満場一致で決められたのは2009年のことでしたが、オレゴン州は早くからガソリン税の限界に注目して、2001年に州議会の議決を受けて Road User Fee Task Force(RUFTF)を編成して検討を始めていました。
2012年には関連機器メーカーに情報提供要望を出して熱心に研究・検討を続けてきていましたが、その後の経過については不勉強でした。
今年の1月25日に発表された州の交通局の Daily Digest Bulletin を見て研究の進展に驚いたのですが、新たに Emovis 社が OReGO に参加することになったとのことです。実務は関連会社のDRIVESYNC. が担当するようです。 Emovis の親会社は Abertis というスペインに本社を置き世界中で有料道路を展開している巨大な会社です。
(注) 数年前のことですが、イタリアのAutostradeとスペインの Abertis が合併する構想が出され両者の合意が成立しました。しかし、イタリア政府が強硬に反対したため実現できませんでした。 Emovis 社の重要さが推測できます。
この1月に Emovis が新たに参加するまでは azuga というメーカーが OReGO の「走行距離課金」業務に参加してきたようです。
この会社は自動車の部品の中で、「頭脳としての機能」を果たしている OBD2 (On Board Diagnostics Second Generation 自己診断機能)の製造能力が認められていて、本社はルーマニアにあります。
「走行距離課金」に OBD2 がどのように結びついているのか、簡単に説明できませんが、OBD2 が自動車の運行に関するすべての情報を集約する機能を持っていることは明らかです。
OReGO の資料の中に、車両のダッシュボードの下に OBD2 の接続端末が用意されていて「走行距離課金」に必要な情報を集約する機器を接続する下記の図が出ています。
右上のグリーンの機器が azugaMRD (Mileage Reporting Device) です。スマホでも情報を見ることができますが、OReGO のセンターあてにデータが送信されます。
詳しい情報は、http://www.myorego.org/about/volunteer/ で読むことができます。
アメリカでは、オレゴン州をはじめとして約50の州政府、機器メーカー、IBTTA や I-95 Corridor Coalition などの団体が MBUFA (Mileage-Based User Fee Alliance) に結集して知恵を絞っています。
日本では、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などの開発が進められる一方で、ガソリンスタンドの廃業が随所で見られます。
建設費の重要な供給源だったガソリン消費の減少によって、道路財源も減少の一途をたどっている筈ですが、政府も業界も「走行距離課金」に関心を示していないように見受けられます。
そろそろ目を覚まして、道路の利用から道路財源を生み出すことを考える時期が来ているのではないでしょうか。中でも、先ずは有料道路と高速道路の存在意義について、抜本的な見直しを行うことの重要さに気づいて欲しいと考える次第です。
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